Claude Codeは、Anthropic社が提供するAIエージェントです。開発ツールとして知られていますが、手元のファイルを読み書きし、決めた手順を何度でも同じやり方で繰り返せるという性質は、問い合わせ対応(CS)や事務作業にもそのまま効きます。

使いどころは大きく3つです。

  1. 返信の一次ドラフト作成 — 過去の対応とマニュアルを参照して、問い合わせへの返信案を作る
  2. ナレッジの集約 — マニュアル・過去メール・チャットでの回答を1つのフォルダにまとめ、AIと人が同じ情報を見られるようにする
  3. データの更新 — 価格改定や仕様変更を、FAQ・返信テンプレート・台帳に横断で反映する

前提は1つだけです。Claude Codeに任せるのは「作る」作業までで、送信と判断は人が持つ。 AIが作った返信案は、人が内容を確認・承認してから送ります。

Claude CodeはなぜCS・事務に向いているのか?

チャットAIとの違いは、AIが手元のファイルを自分で探して読み、結果をファイルとして書き出せることです。CSや事務の仕事は「マニュアルを調べる」「過去の対応を探す」「決まった形式に書き込む」の繰り返しが大半で、この性質と相性が良いのです。

チャットAIとClaude Codeの使い方の違い(CS・事務の場合)
作業チャットAIClaude Code
マニュアル・過去対応の参照毎回コピーして貼り付けるフォルダ内を自分で検索して読む
返信案・更新結果の受け取り画面からコピーして戻すファイルとして書き出す
同じ作業の繰り返し毎回指示を書き直す手順を文章で保存して呼び出す
回答ルール(トーン・禁止事項)会話ごとに伝え直す設定ファイルに書いておけば毎回読まれる

特に効くのが最後の2行です。Claude Codeは、作業フォルダに置いた CLAUDE.md という設定ファイルを毎回読み込みます。ここに「敬語のトーン」「返金の可否は書かない」「迷ったら要確認と書く」といった回答ルールを書いておけば、担当者が変わっても同じルールで返信案が作られます。よく使う手順は「スキル」として保存しておけば、短い指示で呼び出せます。

回答ルールと、実行できる権限は別に設定する

公式資料では、CLAUDE.mdと自動メモリは文脈として扱われ、強制される設定ではないと説明しています。 「送信しない」と書くだけで済ませず、連携先でも送信できる権限を与えない構成にします。

画面引用:Anthropic「How Claude remembers your project」の一文を抜粋(2026年10月26日確認)。日本語の説明はwrenによる要約です。

AIエージェントとチャットAIの違いそのものは、AIエージェントとは?チャットAIとの違いで詳しく整理しています。

使いどころ①:返信の一次ドラフトをどう作らせるか?

問い合わせ本文を渡し、ナレッジのフォルダを参照して返信案をファイルに書き出させます。顧客には何も送られない状態で止めるのが要点です。

問い合わせを渡す

受信した問い合わせを、個人情報を伏せたうえでテキストやCSVで作業フォルダに置く

分類とドラフト作成

Claude Codeが「定型・要確認・緊急」に分け、ナレッジを参照して返信案を書き出す

根拠を添える

返信案ごとに、参照したマニュアルや過去対応のファイル名を書かせる

人がレビューして送信

担当者が事実関係・トーン・過不足を確認し、承認したものだけを送る

図01 Claude Codeで返信の一次ドラフトを作る流れ

指示はたとえば次のように書きます。

inbox/ にある今日の問い合わせを1件ずつ読んで、
knowledge/ のマニュアルと過去対応を参照して返信案を drafts/ に書き出してください。
- 返信案の末尾に、参照したファイル名を「根拠:」として書く
- ナレッジに答えが見つからないものは返信案を作らず、「要確認」として理由を書く
- 返金・契約変更・クレームは返信案を作らず、「エスカレーション」に分ける

ポイントは3つです。

  • 根拠のファイル名を書かせる: レビューする人が「どの情報をもとに書いたか」をすぐ確かめられます。根拠が書けない返信案は、ナレッジにない内容をAIが補った可能性が高いと判断できます
  • 答えがないときは作らせない: 「わからないものは要確認に回す」と明示しておくと、もっともらしい誤答を減らせます
  • 送信の権限を持たせない: メールやチャットツールと連携させる場合も、下書きの作成までに絞ります

AIが作った文面を自動送信してよい範囲と、人が必ず確認する範囲の線引きは、問い合わせ返信をAIで自動生成する|精度を担保するAI+人レビューで詳しく書いています。

使いどころ②:ナレッジはどう集約すればよいか?

AIが読みやすい形で、1つのフォルダにまとめることです。返信案の品質は、AIの性能よりも参照させるナレッジの整い方で決まります。マニュアルが共有ドライブ、過去の回答がメールの送信済みフォルダ、例外の判断がチャットのスレッド、と散らばっている状態では、AIも人も正しい答えにたどり着けません。

フォルダの構成は、たとえば次のような形から始めます。

cs-knowledge/

フォルダ構成の例
回答ルール

CLAUDE.md

トーン・禁止事項・エスカレーション条件

規定の正本

policies/

返品・送料・支払い・個人情報などの規定

よくある質問

faq/

1問1ファイル。規定は正本を参照する

返信の型

templates/

お詫び・発送遅延・在庫切れなど

過去の良い回答

past-replies/

個人情報を伏せたものを保存する

変更履歴

changelog.md

価格・仕様・規約の変更日と内容を残す

FAQ・返信テンプレート規定の確認先は policies/ に統一
図02 回答ルール・規定の正本・回答例を分けて置く。作図:wren。

集約の作業そのものにもClaude Codeが使えます。共有ドライブから書き出したマニュアルや、過去メールのエクスポートを渡し、「同じ内容の重複をまとめて、1問1ファイルのFAQに整理して」と頼めば、たたき台が短時間でできます。人がやるのは、古い情報・矛盾する情報の見極めです。AIは2つのマニュアルが食い違っていても、どちらが正しいかは判断できません。

集約のときに決めておきたいのは次の2点です。

  • 正本を1つにする: 同じ規定が複数のファイルにあると、片方だけ更新されて食い違いが生まれます。規定は policies/ にだけ置き、FAQからはそこを参照する形にします
  • 変更履歴を残す: いつ何が変わったかを changelog.md に書いておくと、「旧価格で回答していないか」をAIにも確認させられます

使いどころ③:データの更新はどう任せるか?

価格改定・仕様変更・営業日の変更などが起きたときに、影響するファイルを横断で探して、修正案を出させる使い方です。CSのナレッジは作るより保つほうが難しく、更新漏れがそのまま誤案内になります。

データ更新でClaude Codeに任せられること
場面Claude Codeに任せる作業人が持つ作業
価格・送料の改定旧価格が書かれたFAQ・テンプレートをすべて探し、修正案を出す改定内容と適用日の確定、修正案の確認
仕様・規約の変更変更点に関係する回答を洗い出し、書き換え案を作る例外の扱いの決定、公開前の確認
問い合わせログの集計CSVを読んでカテゴリ別の件数を出し、FAQに足すべき質問の候補を挙げるどれをFAQにするかの判断
台帳・一覧の更新受発注や対応状況の一覧に、決まった形式で追記・修正する金額・入金などの最終確認

ここで効くのが、ナレッジのフォルダを変更の差分が見える形で管理することです。Gitなどのバージョン管理を使えば、Claude Codeが直した箇所が一覧で確認でき、間違っていれば元に戻せます。AIにファイルを書き換えさせるときは、「どこが変わったか」を人が見られる状態を必ず作っておきます。

Git

変更案を差分で確認する

policies/shipping.md(架空の例)
削除する行(−)

送料:500円

追加する行(+)

送料:600円

適用日:2026年11月1日

AI:修正案を作る

旧送料が残るFAQ・テンプレートも探す

人:内容を確認

金額・適用日・例外の扱いを確認する

承認後に反映

関連ファイルと変更履歴を更新する

図03 差分の読み方を示すwren作成の模式図。料金・日付は説明用の架空の値で、Gitの実画面ではありません。 ロゴ:Git Logo by Jason Long(CC BY 3.0、形状・配色の変更なし)。

問い合わせのログからFAQの候補を拾う考え方は、社内問い合わせを減らす方法でも扱っています。

AIに任せてはいけないことは何か?

顧客への送信と、お金・契約・信用に関わる判断です。Claude Codeは作業の速さを大きく変えますが、内容の正しさを最終的に保証するのは人です。

もう1つ見落とされやすいのが、ナレッジが古いまま使い続けることです。AIは参照した情報が古くても、それを正しいものとして自然な文章にします。誤答の原因はAIの性能より、更新されていないナレッジであることが多いのです。

自社で回すときに残る負担は何か?

仕組みを作ること自体は、数日あれば始められます。続けるうえで重いのは、次の3つです。

  • 毎日のレビュー: AIが作ったドラフトを、誰かが毎日確認して送る必要があります。件数が増えるほど、この時間は減らせても無くはなりません
  • ナレッジの更新: 商品・価格・規約が変わるたびにナレッジを直し、矛盾がないか見る担当が要ります。ここが止まると、返信案の品質がそのまま落ちます
  • 担当者の偏り: Claude Codeを使いこなせる人が社内に1人だけだと、その人の異動や休みで仕組みが止まります。設定ファイルや手順を残していても、直せる人がいなければ同じです

つまり、Claude Codeで変わるのは「1件あたりの作業時間」で、「誰かが毎日見続ける」という運用の構造は残ります。この構造を社内で持ち続けられるかどうかが、自社運用か外注かの分かれ目です。判断の軸はCS対応の内製と外注の比較でも整理しています。

自社でやらなくても、ゼンナゲCSで巻き取れる

ここまで書いた仕組みを、自社で組んで回す必要はありません。弊社のゼンナゲCSは、この記事と同じ体制で問い合わせ対応と周辺の事務を代行しています。

  • 返信の一次ドラフト: AIが過去の対応とナレッジを参照して返信案を作り、専門オペレーターが必ずレビュー・承認してから送信します。AIが単独で顧客に返信することはありません
  • ナレッジの集約と更新: 散らばったマニュアルや過去の回答の整理から、価格・仕様の変更の反映まで、弊社側で持ちます
  • 周辺の事務: 受発注の入力、納期の連絡、請求書の発行など、問い合わせから続く事務作業も同じ窓口で引き受けます

社内に残るのは、返金の最終承認など貴社に判断いただく範囲だけです。その線引きは運用開始前に一緒に決めます。

「Claude Codeで自社運用するか、任せるか」の段階からでも構いません。現在の問い合わせの件数や体制をうかがったうえで、どこまでを任せるのが合うかをご提案しますので、お問い合わせフォームからお気軽にお問い合わせください。