呼量削減は、電話の受け口を狭めることではなく、顧客が電話をかける前に自己解決できる状態をつくり、残った問い合わせをテキストへ寄せることで進みます。 打ち手はFAQ・Web導線、IVRからのWeb誘導、チャットボット、事前通知、テキスト+人の運用の5つで、効く順番は「電話の手前」から「電話の中」へ、です。

背景には業界全体の流れがあります。コールセンター白書2025の企業調査(2025年7月実施)では、運営課題の上位に「オペレータ1人当たりの生産性向上」「呼量削減」「生成AIによる生産性向上」が並びました(コールセンタージャパン)。採用で解決する前提が崩れ、電話そのものを減らす方向に業界が動いています(調査時点: 2026年9月)。

この記事では、呼量の意味、5つの打ち手と公開事例の削減率、着手順、そしてやってはいけない減らし方を順に整理します。

呼量とは何か

呼量とは、一定時間内に電話回線がどれだけ使われたかを示す指標です。単位は「アーラン」で、平均通話時間×呼数÷単位時間で求めます。たとえば平均通話時間5分の電話が1時間に60件あれば、300分÷60分=5アーランです(Helpfeel)。

ただし実務で「呼量削減」と言うときは、アーランを厳密に計算するというより、入電件数を減らすという意味で使われます。トランスコスモスは呼量削減を「顧客が自ら問題を解決できる環境を整えること」と定義し、目的を応対品質の維持・顧客の不満軽減・センター運営の最適化の3つに整理しています(トランスコスモス、2025年10月公開)。

つまり呼量削減は、電話を「受けない」施策ではなく、電話を「かけなくて済む」状態をつくる施策です。

なぜ今、呼量削減なのか

理由は2つあります。人が採れないことと、顧客側がすでに電話以外を望んでいることです。

呼量削減が優先課題になっている背景(調査時点: 2026年9月)
調査内容
コールセンター白書2025(2025年7月調査)運営課題のトップが調査開始以来初めて「オペレータ1人当たりの生産性向上」になり、「呼量削減」「生成AIによる生産性向上」が続いた
日本コンタクトセンター協会 2025年度調査(N=68)電話業務は「昨年度より減少した」19社が「増加した」16社を上回った。採用に苦労している企業は82.1%
トランスコスモス(顧客調査の引用)80%以上の顧客がまずWebサイトで情報を探す。チャットの利用意向は55%

コールセンター白書2025では、前年までトップだったオペレータ・SVの採用・育成が「課題ではあるが手のつけようがない」と後退し、生産性と呼量に焦点が移りました(コールセンタージャパン)。日本コンタクトセンター協会の調査でも、電話業務は減少した企業のほうが多く、採用に苦労している企業が82.1%に達しています(CCAJ)。業界データの詳しい読み方はコールセンターの効率化はどこから手を付けるかで扱っています。

顧客側も、80%以上がまずWebで情報を探し、チャットの利用意向は55%に達しています(トランスコスモス)。電話をかけている顧客の多くは「電話がしたい」のではなく、「Webで答えが見つからなかった」から電話しているということです。

呼量削減の5つの打ち手

打ち手は、電話がかかってくる前に効くものから順に並べると整理しやすくなります。

呼量削減の5つの打ち手と、効く問い合わせ
打ち手効く問い合わせ効かない問い合わせ
1. FAQ・Web導線の改善回答が毎回同じで、顧客が自分で探せるもの個別の契約状況に依存するもの
2. IVR・ビジュアルIVRからのWeb誘導すでに電話をかけた顧客のうち、Web手続きで済む用件話さないと整理できない相談
3. チャットボット選択肢で分岐できる定型の案内前提確認が必要な相談、クレーム
4. 事前通知(メール・SMS)配送遅延・メンテナンスなど、こちらから知らせれば発生しない用件顧客側の事情で発生する用件
5. テキスト+人の運用定型を削ったあとに残る非定型の問い合わせ電話でしか成立しない緊急対応

1. FAQ・Web導線の改善

最初にやるべき打ち手で、費用も最も小さくて済みます。リコーは問い合わせが減らない原因として、コールリーズン分析の不足、「FAQが見つからない」「マニュアルが分かりにくい」といったWebサイトの不備、商品情報の説明不足によるニーズとコンテンツのミスマッチの3つを挙げています(リコー、2026年2月更新)。

FAQを書くだけでは足りず、電話番号の掲載箇所や問い合わせフォームの手前にFAQを置く導線設計が要ります。FAQが存在していても、電話番号のほうが目立つ位置にあれば顧客は電話をかけます。

2. IVR・ビジュアルIVRからのWeb誘導

すでに電話をかけてしまった顧客を、テキストへ戻す打ち手です。IVR(自動音声応答)の冒頭でSMSにFAQやWeb手続きのURLを送る方法と、Webやアプリ上にIVRのメニューを画面で見せる「ビジュアルIVR」があります。

モビルスが公開している事例では、明治安田生命がビジュアルIVRを導入し、コールリーズン違いの入電が減少して一通話あたり約35秒の応対時間短縮を実現しています。SOMPOひまわり生命では、ビジュアルIVRを経由した顧客のうち電話を選んだのは18%、インターネットでの手続きを選んだのは45%でした(モビルス、2025年6月更新)。選択肢を見せれば、Web手続きを選ぶ顧客のほうが多いということです。

3. チャットボット

定型の問い合わせを24時間で自動応答する打ち手です。トランスコスモスの公開事例では、シャトレーゼがチャットボット導入によりアプリ関連の問い合わせを26.6%削減しています。同社はチャットボットで最大79%の自己解決が可能と試算していますが、これは問い合わせの内訳次第で、定型の比率が低い事業では上限も低くなります(トランスコスモス)。

チャットボットが効く問い合わせと効かない問い合わせの見分け方、導入前に減らせる上限を見積もる手順はチャットボットでコールセンターの問い合わせは減るかで詳しく扱っています。

4. 事前通知(メール・SMS)

「配送が遅れている」「メンテナンスでログインできない」といった問い合わせは、こちらから先に知らせれば発生しません。問い合わせの原因を顧客側で解決させるのではなく、原因そのものをなくす打ち手です。用件別に数えたときに「こちらの連絡不足で発生している電話」がどれだけあるかを見てください。

5. テキスト+人の運用

定型を削ったあとに残るのは、相手の状況確認や判断が必要な非定型の問い合わせです。これを電話のまま受け続けると、受電のたびに作業が中断し、対応履歴も残りにくくなります。メール・問い合わせフォーム・チャットに寄せれば、AIが返信ドラフトを作り、人がレビューして送る運用が可能になります。詳しくは後述します。

着手順:コールリーズン分析から始める

打ち手を選ぶ前に、どの用件の電話が何件来ているかを数えます。ここを飛ばすと、導入した施策が何件に効いたのかを後から検証できません。

コールリーズンを数える

直近1〜3か月の入電を用件で分類し、件数の多い順に並べる。粒度は10〜20種類で十分

用件ごとに打ち手を割り当てる

定型はFAQ・ボット、手続き系はWeb導線、連絡不足で発生する用件は事前通知、判断が要る用件は有人へ

電話の手前に入口を置く

電話番号の掲載箇所とIVRの冒頭で、FAQ・チャット・Web手続きへ誘導する

用件別の件数で検証する

全体の入電数ではなく、打ち手を当てた用件の件数の増減で見る

残った電話をテキストへ寄せる

非定型はメール・フォーム・チャットで受け、AIのドラフト+人のレビューで処理する

Fig. 01 — 呼量削減の着手順

検証のKPIは用件単位で置きます。リコーは「パスワードリセットの問い合わせを50%削減する」のような具体的なKPI設定を推奨しています(リコー)。全体の入電数だけを追うと、季節変動やキャンペーンの影響と施策の効果が混ざって、何が効いたのか分からなくなります。

問い合わせが急増して手が回らない状態から着手する場合は、「今すぐ」と「根本」を分ける考え方を問い合わせが増えすぎて対応できない時の対処にまとめています。

やってはいけない呼量削減

呼量削減は件数を減らすこと自体が目的ではありません。トランスコスモスも「単に呼量削減を目指すのはNG」と明記し、FAQやチャットボットで解決できなかった顧客が「たらい回しにされた」と感じるリスク、顧客との接点が減って関係が希薄化するリスクを挙げています(トランスコスモス)。

減らしてよい電話

  • 回答が毎回同じで、FAQで済む用件
  • Web・アプリで手続きが完結する用件
  • こちらから先に知らせれば発生しない用件

残すべき電話

  • 判断や補償が絡み、話さないと整理できない相談
  • 感情を伴うクレーム、緊急性の高い連絡
  • 自己解決に失敗した顧客の、有人への切り替え先
Fig. 02 — 減らしてよい電話と、残すべき電話

減らした後に残る問い合わせを、テキスト+人で受ける

5つの打ち手を当てたあとに残るのは、人が判断する非定型の問い合わせです。ここで電話にこだわる必要はありません。AIが電話に出るサービスでも自動化できるのは用件の聞き取りと記録・振り分けまでで、回答の中身を作る工数は残ります(電話対応をAIに任せるで整理しています)。

メール・問い合わせフォーム・チャットに寄せると、やり取りが記録に残り、送信前に回答をレビューできるため、AIのドラフト生成と人の確認を組み合わせた運用が成立します。当社が自社開発・自社運用しているCS運用代行「ゼンナゲCS」は、この位置づけのサービスです。AIが問い合わせを分類して返信ドラフトを生成し、専門オペレーターが必ずレビュー・承認してから送信します。AIが単独で顧客へ返信することはなく、判断が必要な案件は事前に設計したルートでお客様側の担当者へエスカレーションします。

対応チャネルはメール・問い合わせフォーム・LINE公式アカウント・サイトチャットで、これら以外もご利用中のツールに合わせて個別に接続します。電話対応は標準チャネルにしていないため、電話をテキストへ寄せる導線設計とあわせてご相談ください。料金は問い合わせ件数・チャネル・対応時間帯に応じて個別にお見積もりしますので、お問い合わせからご連絡ください。電話を外した運用の考え方はメールのみ対応OKのCS代行(ノンボイス)でも解説しています。

まとめ

呼量削減は、電話の受け口を狭めることではなく、顧客が電話をかける前に自己解決できる状態をつくり、残った問い合わせをテキストへ寄せることで進みます。コールセンター白書2025では「呼量削減」が運営課題の上位に入り、日本コンタクトセンター協会の調査でも電話業務は減少局面にあります。

打ち手はFAQ・Web導線、IVRからのWeb誘導、チャットボット、事前通知、テキスト+人の運用の5つ。着手順はコールリーズン分析が最初で、用件別の件数で効果を検証します。公開事例の削減率(チャットボットで特定用件26.6%減、ビジュアルIVRで電話選択18%に対しWeb選択45%)はいずれもベンダー公開事例のため、自社の問い合わせの内訳で見積もり直してください(本記事のデータは調査時点: 2026年9月)。