チャットボットやAI窓口の一番のデメリットは、回答の精度よりも、顧客に「人に繋がらない」と感じさせることです。 ボットで解決しなかった顧客の行き場がない設計になっていると、不満は窓口ではなく企業そのものに向かいます。

対策の中心は、AIの性能を上げることではなく、どの問い合わせを人に引き継ぐかを先に決めておくことです。

チャットボット・AI窓口のデメリットは何か?

チャットボットやAI窓口のデメリットは、人に繋がらないと感じた顧客の不満、困りごとを言葉にできない人が途中で詰まること、個別の事情に答えられないこと、誤回答、企業が冷たい印象を持たれることの5つです。中でも影響が大きいのは1つ目で、調査では満足より不満のほうが多くなっています。

株式会社アイ・エヌ・ジー・ドットコムが2026年8月に全国の男女1,597名に行った調査では、電話窓口でAI対応を経験した人の満足度は次のとおりでした(PR TIMES、調査時点: 2026年8月)。

回答割合
満足・やや満足23.0%
どちらともいえない40.6%
不満・やや不満36.3%
AI対応経験者625名の満足度。満足5.6%、やや満足17.4%、どちらともいえない40.6%、やや不満18.7%、不満17.6%画像を拡大 ↗
AI対応を経験した625名への設問。満足層23.0%、不満層36.3%で、中立の回答が40.6%を占めます。調査時点:2026年8月3〜6日。図版引用:株式会社アイ・エヌ・ジー・ドットコム調べ(調査リリース、2026年9月9日公表)。

同じ調査で、電話窓口に求めることの1位は「すぐにつながって待たされないこと」(83.7%)、2位は「答えが正確なこと」(68.5%)でした。AIの回答を「信用できる」「ある程度信用できる」と答えた人は59.6%いるので、AIの回答そのものが嫌われているわけではありません。不満の多くは、正確さより繋がり方の側にあります。

海外でも同じ傾向が出ています。米Gartnerが2024年7月に発表した調査(顧客5,728名)では、64%が「企業にはカスタマーサービスでAIを使ってほしくない」と答え、その理由で最も多かったのは「人に繋がりにくくなる」ことでした(Gartner)。

チャットボット・AI窓口の主なデメリット
デメリット起きること
人に繋がらないボットで解決しない顧客の行き場がなくなり、不満が企業に向かう
言葉にできない人が詰まる困りごとを整理して入力できない人は、選択肢やキーワードにたどり着けない
個別の事情に答えられない注文状況や契約内容に依存する質問は、システム連携がなければ答えられない
誤回答をそのまま返す人の確認を通らないため、間違いが顧客に直接届く
冷たい印象を持たれる機械的な対応が「客を相手にしていない」と受け取られる

どの問い合わせがボットで減り、どれが人に残るかはチャットボットでコールセンターの問い合わせは減るかで詳しく扱っています。本記事は、ボットを入れたあとに顧客を怒らせない設計に絞って書きます。

顧客が怒るのはどんな窓口設計か?

顧客が怒るのは、AIが答えられなかったときに人へ移る道が用意されていない窓口です。よくある形は、人への連絡手段を載せていない、人に移っても同じ説明を繰り返させる、答えられない質問でボットが同じ案内を繰り返す、夜間・休日に人へ繋がらないことを事前に伝えていない、の4つです。

2026年8月には、AI応答のコールセンターに初めて電話したという体験を書いたXの投稿が3万9千件以上のいいねを集めました(X、2026年10月23日時点)。投稿者は続けて、ある企業のサイトに電話番号が載っておらず、フォームから問い合わせるしかなかったことも書いています。同じ時期には、困りごとを自分で言葉にできない人がいるからコールセンターはAIで置き換えきれない、という趣旨の投稿も2万件以上のいいねを集めていました(X)。

4つの形を順に見ます。

人への連絡手段を載せていない。 ボットだけを置き、電話番号やメール窓口をサイトから外すと、ボットで解決しない顧客は行き場を失います。消費者センターやSNSに不満が向かうのはこのときです。

人に移っても同じ説明を繰り返させる。 ボットに入力した内容がオペレーターに渡らないと、顧客は最初から説明し直すことになります。ボットに使った時間がそのまま無駄になるため、不満が大きくなります。

答えられない質問で同じ案内を繰り返す。 シナリオにない質問に、ボットが「よくある質問」への誘導を何度も返す状態です。何回目で人に移すかを決めていないと起きます。

人に繋がらない時間帯を伝えていない。 夜間・休日にボットだけが動いている場合、その時間に人へ移れないこと、いつ人から返事が来るかを先に伝えておく必要があります。

AI音声の窓口について、ウィズ・プランナーズ株式会社が2026年6月に行った調査(全国1,000名、自社の電話代行サービスの告知を兼ねた調査)では、折り返しの連絡を頼みたい場面で相手がAIだった場合、19.0%が「折り返しは頼まずに切る(または別の手段で連絡する)」と答えています(PR TIMES)。人に繋がらないと感じた時点で、問い合わせそのものをやめる顧客が一定数いるということです。

どの問い合わせを人に引き継ぐべきか?

人に引き継ぐ問い合わせは、内容が複雑・例外的なもの、本人確認や契約変更が絡むもの、怒りや謝罪を伴うもの、同じ質問が2回続いたもの、顧客が人との対応を求めたもの、の5つを目安に決めます。条件を先に決めておけば、ボットが答えられない質問を抱え込む状態を防げます。

人に引き継ぐ5つの条件
条件判定の例理由
内容が複雑・例外的規約にない対応の相談、複数の注文にまたがる質問69.3%が「必ず人に」と答えた場面
本人確認・契約変更が絡む解約、支払い方法の変更、登録情報の訂正誤った案内の影響が大きい
怒り・謝罪を伴う不良品、配送の遅れ、対応への苦情機械的な返答で悪化しやすい
同じ質問が2回続いたボットの回答のあとに同じ趣旨の入力が来たボットの回答で解決していない
顧客が人を求めた「担当者と話したい」「人に繋いで」求められた時点で引き継ぐ

1行目の69.3%は、前述のアイ・エヌ・ジー・ドットコムの調査で「内容が複雑だったり、例外的だったりするとき」に「必ず人に対応してほしい」と答えた割合です。同じ設問で「急いで相談したいとき」も49.0%ありました(調査時点: 2026年8月)。

人に電話対応してほしい場面の調査グラフ。全国1,597名の複数回答で、複雑・例外的な用件69.3%、急ぎの相談49.0%画像を拡大 ↗
全国1,597名への複数回答の設問。複雑・例外的な用件では69.3%、急ぎの相談では49.0%が人の対応を希望しています。調査時点:2026年8月3〜6日。図版引用:株式会社アイ・エヌ・ジー・ドットコム調べ(調査リリース、2026年9月9日公表)。

大手の例では、三井住友銀行が2026年2月に始めた「SMBC AIオペレーター」が、対応範囲を本人確認の要らない一般的な照会に限っています。本人確認が必要な手続きは従来どおり有人のコールセンターが受け、AIだけで解決できない相談や途中で本人確認が必要になった場合は、営業時間内であれば電話をかけ直させずにオペレーターへ引き継ぐ形です(三井住友銀行ほか ニュースリリース)。対応範囲と引き継ぎ条件を公開前に決めている点が参考になります。

クレームのように怒りを伴う問い合わせの扱いは、クレーム対応は外注できるかでエスカレーションの決め方を整理しています。

有人対応の工数を増やさずに引き継ぐには?

引き継ぎを増やすと、有人対応の工数が増えるのではないかという心配があります。工数を抑える方法は2つあります。

1つ目は、引き継ぐときに会話ログを渡すことです。ボットに入力された内容と、ボットが返した回答をオペレーターが読める状態にしておけば、聞き直しの時間が要りません。顧客に同じ説明をさせないことにもなります。

2つ目は、AIを顧客の前ではなく、オペレーターの手元に置くことです。AIは返信の下書きを作るだけにして、人が確認・修正してから送ります。顧客から見れば最初から人が対応しているので、人に繋がらない不満は起きません。回答を一から書く工数はAIで減らせます。この分け方の設計は問い合わせの自動返信にAIを使うで扱っています。

以下は導入企業の事例ではなく、弊社自身の問い合わせ対応の運用です。弊社では届いたメールをAIが「定型・要判断・緊急」の3つに分け、定型には過去の回答を参照した下書きを付けます。分類に迷うものは要判断に入れ、送信は必ず人が行います。運用の詳細は「メール当番」をAIに引き継いだ日に書きました。

会話履歴を引き継ぐ

顧客が伝えた内容と、ボットが返した回答を担当者に渡す。

AIが返信の下書きを作る

過去の回答を参照して作成。判断が必要なものは人へ回す。

人が確認・修正して送信する

内容を承認してから返信。AIが単独で送信しない。

Fig. 01 — 会話履歴と下書きを人へ渡す流れ。本節の説明をwrenが図解したもので、特定の製品の画面ではありません。

電話の窓口をAIに任せる場合の線引きは、電話対応はAIでどこまで自動化できるかで整理しています。

人の確認付きで問い合わせ対応を任せるには?

ゼンナゲCSは株式会社wrenが提供するカスタマーサポート代行で、メール・問い合わせフォーム・LINE公式アカウント・サイトチャットの問い合わせについて、AIが返信の下書きを作り、専門オペレーターが確認・承認してから送信します。AIが単独で顧客に返信することはありません。ボットのように顧客の前にAIを置くのではなく、人が対応する窓口のままAIで作業を減らす形です。

電話対応は、ご要望・要件に応じて個別にご相談ください。料金は問い合わせ件数・チャネル・対応時間帯を伺ったうえでお見積もりします。有人レビュー付きのカスタマーサポート代行の対応範囲をご確認のうえ、お問い合わせください。

まとめ

チャットボットやAI窓口の一番のデメリットは、顧客に人に繋がらないと感じさせることです。2026年8月の調査では、AI対応を経験した人の満足は23.0%、不満は36.3%で、内容が複雑・例外的なときは69.3%が人の対応を求めています。

対策は、人への連絡手段を残すこと、人に引き継ぐ条件(複雑・例外、本人確認・契約変更、怒り・謝罪、同じ質問の繰り返し、顧客の希望)を先に決めること、引き継ぐときに会話ログを渡すことの3つです。AIで工数を減らしたい場合は、AIを顧客の前ではなくオペレーターの手元に置く方法もあります(本記事の調査データは調査時点: 2026年8月)。