コールセンターの効率化は、システムを選ぶ前に「問い合わせの内容別の件数」を数えるところから始まります。 どの質問が何件来ているかが分からないまま導入を決めると、その施策が何件に効いたのかを後から検証できないためです。
業界全体の流れも、この順番を支持しています。日本コンタクトセンター協会の2025年度調査では、電話業務は減り、テキストと自動応答が増えています(CCAJ、調査時点: 2026年8月)。
要点は次の3つです。
- 電話は減少局面にある: 電話業務が「昨年度より減少した」19社が「増加した」16社を上回った。
- 増えているのはテキストと自動応答: テキスト業務は28社、自動応答は21社が「増加した」と回答。
- 人は採れない: 採用に苦労している企業が82.1%。過剰と答えた企業はゼロ。
以下で、この調査が示す構造、効率化の着手順、施策ごとの向き不向きを整理します。
業界データが示していること
出典は「2025年度 コンタクトセンター企業 実態調査」(実施主体: 一般社団法人日本コンタクトセンター協会 情報調査委員会、実施期間 2025年6月16日〜7月23日、対象109社/回収68社・回収率62.4%)です(CCAJ)。回答しているのはコールセンターを受託する事業者側なので、業界の供給側の実感を表す数字として読めます。
業務量の増減
| 業務 | 増加した | 減少した |
|---|---|---|
| 電話業務 | 16社 | 19社 |
| テキスト業務(メール・チャット等) | 28社 | 2社 |
自動応答(チャットボット・ボイスボット等) | 21社 | 2社 |
電話業務だけが、減った企業のほうが多くなっています。テキストと自動応答は、増えたと答えた企業が減った企業を大きく上回りました(N=68、CCAJ)。
対応チャネルの構成
提供しているチャネルの割合は、電話95.6%、eメール80.9%、Webフォーム69.1%、FAX58.8%、有人チャット55.9%、チャットボット48.5%、AIボイスボット35.3%、ソーシャルメディア32.4%です(2025年度、N=68)。
3年間の推移を見ると方向がはっきりします。FAXは73.4%→62.9%→58.8%と下がり続け、有人チャットは46.9%→52.9%→55.9%と上がり続けています。AIボイスボットは28.1%→27.1%→35.3%で、直近1年で伸びました(CCAJ)。
人が採れない
採用活動については、「苦労している」26社と「やや苦労している」29社を合わせて45社となり、非公開1社を除く67社の82.1%を占めました。職種別の不足感(「不足している」と「やや不足している」の合計)は、スーパーバイザーが87.9%、コミュニケーター・オペレーターが72.7%です。いずれの職種においても「過剰気味である」と答えた企業はありませんでした(CCAJ)。
派遣を活用する理由も「一時的な人材不足の解消」が88.1%で最多です。
つまり、増員で解決する前提が業界全体で崩れているということです。効率化はコスト削減の話であると同時に、人が採れない前提で運用を成立させる話でもあります。
効率化の着手順
次の順で進めると、施策ごとの効果を検証しながら進められます。
1. 内容別の件数を数える。 直近1か月の問い合わせを内容で分類し、件数の多い順に並べます。この作業をしないと、以降のすべての判断が勘になります。分類の粒度は、最初は10〜20種類程度で十分です。
2. 上位の質問が「定型で答えられるか」を判定する。 回答が毎回同じなら定型、相手の状況によって変わるなら非定型です。定型のものはFAQ・自動応答の対象、非定型のものは人が対応する対象として分けます。
3. 定型のものを、問い合わせの手前に置く。 FAQページの拡充と、そこへの導線(サイト内検索、問い合わせフォーム手前での案内)を整えます。ここで減るのは「問い合わせが発生する前」の件数なので、効率化としては最も効きます。
4. 残った定型を自動応答に回す。 チャットボットやボイスボットが向くのはこの層です。上の調査でチャットボット対応が48.5%にとどまっているのは、定型化できる問い合わせの割合が事業によって大きく違うためと考えられます。自社の比率を2で把握してから判断してください。
5. 非定型の対応を、内製するか外注するか決める。 ここまで削ってなお残る対応が、人が必要な部分です。採用が難しい前提であれば、外注で変動費として持つ選択肢が現実的になります。
順番が重要なのは、減らせるものを減らさずに外注すると、多い件数のまま費用を払うことになるからです。件数を減らす手順は問い合わせが増えすぎて対応できない時の対処で詳しく扱っています。
施策ごとの向き・不向き
| 施策 | 効く問い合わせ | 効かない問い合わせ |
|---|---|---|
| FAQ・導線改善 | 回答が毎回同じで、顧客が自分で探せるもの | 個別の契約状況に依存するもの |
| チャットボット・ボイスボット | 選択肢で分岐できる定型の案内 | 前提の確認が必要な相談・クレーム |
| AIによる返信ドラフト生成 | 回答の型はあるが、文面の調整が要るもの | 社内の判断が必要なもの |
| 電話代行・AI電話 | 受電で作業が中断する、時間外の取りこぼし | 回答を作る工数そのもの |
| CS代行(外注) | 回答を任せられる、量のある対応 | 自社にしか判断できない案件 |
電話代行やAI電話が「回答を作る工数」に効かない理由は、電話代行とCS代行は何が違うかと電話対応をAIに任せるで整理しています。
ゼンナゲCSの位置づけ
当社が自社開発・自社運用しているCS運用代行「ゼンナゲCS」は、上の表の下2行、AIによる返信ドラフト生成とCS代行を組み合わせた形です。メール・問い合わせフォーム・LINE公式アカウント・サイトチャットに届いた問い合わせについて、AIが返信ドラフトを生成し、専門オペレーターがレビュー・承認してから送信します。AIが単独で顧客へ返信することはありません。
これら以外のチャネルも、ご利用中のツールに合わせて個別に接続します。電話対応は、ご要望・要件に応じて個別にご相談ください。
料金は問い合わせ件数・チャネル・対応時間帯に応じて個別にお見積もりします。ゼンナゲCSのサービス内容をご確認のうえ、お問い合わせください。
まとめ
日本コンタクトセンター協会の2025年度調査(回答68社)では、電話業務は減少した企業のほうが多く、テキスト業務と自動応答は増加した企業が大きく上回りました。採用に苦労している企業は82.1%で、人員が過剰と答えた企業はありません。
この前提のもとでは、効率化は「何を導入するか」ではなく「どの問い合わせに、どの手を当てるか」の問題になります。内容別の件数を数え、定型と非定型を分け、定型は問い合わせの手前とボットへ、非定型は人へ。この順で進めれば、施策ごとに何件減ったかを検証しながら進められます(本記事のデータは調査時点: 2026年8月)。