脱エクセルは、社内のExcelを一度にシステムへ移す作業ではありません。 表を「1人で使う計算表」「複数人で更新する台帳」「他のシステムとつなぐ業務」の3種類に分け、困っている台帳から1つずつ移します。

複数人で更新する台帳の多くは、kintoneやAppSheetなどのノーコードツールで足ります。受注や在庫を他のシステムと自動でつなぐ業務、計算や承認のルールが複雑な業務、社外の人が使う業務は、開発で移したほうが後から困りません。

Excelで管理していると何が困るのか?

Excelで困るのは、表計算そのものではなく、複数人で同じ表を更新することです。誰かが開いていると編集できない、どれが最新版か分からない、関数やマクロを作った担当者しか直せない、という問題がここから起きます。

Excel関連ツールを提供する株式会社KUIXが2023年2月に行ったインターネット調査では、社員101名以上の企業でデータ管理にExcelを使う会社員1,287人のうち、約7割がExcelでのデータ管理に限界やデメリットを感じていました。困っている点で多かったのは、複数人で同時に編集できないこと、属人化、最新版が分からないことです(KUIX「Excelによるデータ管理業務の実態調査」、調査時点: 2023年2月)。

一方で、同じ調査では「脱Excel」を考えている人は半数に届かず、理由として多かったのは、Excelの手軽さを手放したくない、代わりになるものがない、という声でした。Excelの手軽さを残す業務と、仕組みに移す業務を分けることが、脱エクセルを止めないための前提になります。

脱エクセルはどの順番で進めるか?

進め方は、Excelを書き出す、3種類に分ける、最初の1つを移す、並行して運用する、元のExcelを止める、の5段階です。

Excelを書き出す

ファイルごとに、誰が・いつ・何のために更新しているかを一覧にする

3種類に分ける

1人で使う計算表/複数人で更新する台帳/他のシステムとつなぐ業務

最初の1つを決める

実際に困っている台帳を1つ選び、ノーコードか開発かを決める

並行して運用する

2〜4週間ほどExcelと並行して使い、足りない項目と例外を直す

Excelを止める

元のExcelを読み取り専用にしてから、次の台帳に進む

図01 脱エクセルを進める5段階

Excelを書き出す段階では、ファイル名だけでなく、更新する人と見る人を必ず書きます。同じ情報が別々のExcelに二重に入力されていることがよくあり、ここで見つかれば、移すときに1つにまとめられます。

3種類に分ける段階で、1人で使う計算表は対象から外します。分析や試算、一回きりの集計は、Excelのほうが速く、移す理由がありません。

並行して運用する期間を置くのは、キャンセル・修正・差し戻しといった例外の処理が、最初の設計から漏れやすいためです。例外の処理は担当者の頭の中にしかないことが多く、実際に使ってみて初めて出てきます。

ノーコードで足りる業務と、開発が要る業務はどう分けるか?

分けるときに見るのは、使う人、つなぐ先、ルールの複雑さ、データ量の4点です。

ノーコードツールで足りる業務と、開発を検討する業務
見る点ノーコードツールで足りる開発を検討する
使う人社内の数人〜数十人取引先・顧客など社外の人も使う
他のシステムとの連携無い、またはCSVの取り込み・書き出しで足りるECサイト・会計・物流などと自動でつなぐ
計算・承認のルール入力・一覧・検索・1〜2段の承認例外が多い、条件で分岐する計算や承認がある
データ量・速度1つの台帳に数千〜数万件毎日大量に増える、集計の速度が問題になる
画面ツールの標準の画面で困らない現場の作業手順に合わせた画面が要る

左の列に収まる業務は、顧客台帳、案件管理、日報、備品や貸出の管理などです。この場合、まずノーコードツールで移すほうが、費用も期間も小さく済みます。

右の列に1つでも当てはまる業務は、ノーコードツールでもプラグインや外部連携で対応できることはありますが、設定が積み重なるほど、ツールの中身が分かる人がいないと直せない状態になります。Excelの属人化を、ノーコードツールの属人化に置き換えるだけになりかねません。

ノーコードツールの料金の目安

代表的なツールの公開料金は次のとおりです(調査時点: 2026年10月、各社公式の料金ページ)。

ツール・プラン1ユーザーの月額最低契約備考
kintone ライトコース1,000円(税抜)10ユーザー外部連携・プラグインは使えない
kintone スタンダードコース1,800円(税抜)10ユーザー外部連携・プラグインが使える
AppSheet Core10ドル—多くの有料Google Workspaceプランに含まれる

出典: kintone 料金、AppSheet Pricing

kintoneは10ユーザーからの契約なので、使う人が3人でも10人分の料金がかかります。スタンダードコースなら月18,000円(税抜)からです。Google Workspaceを使っている会社は、追加の費用なしでAppSheetを試せる場合があります。

スプレッドシートをアプリにする場合に気をつけることは?

GoogleスプレッドシートをAppSheetなどでアプリにする方法は、元の表を活かしたまま入力画面を作れるので、最初の一歩として向いています。ただし、元のスプレッドシートを直接編集する人が残ると、アプリの入力ルールが効かなくなります。アプリにしたら、元の表は編集できる人を絞ってください。

最近は、AIに指示してツールを自作する会社も増えています。自作したものを業務で使い続けるなら、ログインと権限、データのバックアップ、誰が直せるかを最初に決めておく必要があります。確認する項目はAIで作った業務システムを本番に出す前に確認する5項目にまとめました。

開発を頼むときは何を用意すればよいか?

開発を頼むときは、次の5つを用意すると、見積もりの幅が狭くなります。

  1. 今使っているExcelの現物(個人情報はダミーに置き換えたもの)
  2. 誰がいつ更新し、誰が見ているか
  3. 月に何件ほど入力があるか
  4. 例外の処理(キャンセル・修正・差し戻しなど)
  5. つなぎたい他のシステムの名前(ECサイト、会計ソフト、物流など)

中でも例外の処理は、書き出してみると数が多く、開発の範囲を大きく左右します。完成後の保守まで頼む場合の費用は、Webサイト・システム保守の費用と、保守契約で頼めることを参考にしてください。

脱エクセルの開発はどこに頼めるか?

ノーコードツールで足りる業務は、ツールの販売代理店や設定の支援会社に頼むのが近道です。他のシステムとの連携や、例外の多い業務の移行が必要な場合は、開発会社に相談してください。

wrenは、Excel・Accessで管理している業務のWeb化や、外部サービスとのデータ連携を業務システムの受託開発として承っています。現在の業務手順と使っているExcelを確認し、ノーコードツールで足りる部分と開発が要る部分を分けてから、開発する範囲を決めます。開発相談フォームから、今使っているExcelの概要と困っていることをお知らせください。

まとめ

脱エクセルは、社内のExcelを一度に移す作業ではありません。表を1人で使う計算表、複数人で更新する台帳、他のシステムとつなぐ業務の3種類に分け、困っている台帳から1つずつ移します。

台帳は、入力・一覧・検索・簡単な承認で回るならノーコードツールで足ります。他のシステムとの自動連携、例外の多い計算・承認、社外の利用、大量データのどれかがあれば、開発を検討してください。移したあとは2〜4週間ほど並行して運用し、例外の処理を洗い出してから元のExcelを止めます。