弊社には「毎朝GA4を開いて数字を確認する」という仕事がありません。代わりに、毎朝AIがGA4とSearch Consoleの前日数値を取得して過去平均と比較し、異常があった朝だけ、要因の仮説つきでSlackに報告してきます。何もなければ、何も届きません。
これは弊社で毎朝実際に動いている仕組みです。この記事では、なぜ「毎日見る」のをやめたのか、異常検知のしきい値をどう決めたか、そして同じものを30分で作り始める最小構成を公開します。
毎朝の「転記」は、仕事ではなかった
以前の運用は、よくあるものでした。朝にGA4のダッシュボードを開き、前日のセッション数や流入元をスプレッドシートに転記する。数字は毎日「見て」いる。でも振り返ると、そこには2つの問題がありました。
- 見ているのに、分析していない——転記して前日比を眺めるだけで、「なぜ増えたのか・減ったのか」まで掘る時間は毎朝は取れない
- 毎日見ているのに、異変には数日遅れる——数字の変化が意味のある異常なのか日々の揺らぎなのか、目視では判別できず、「そういえば先週から落ちてる」と気づくのが数日後になる
つまり、毎朝30分かけていたのは「数字を見る仕事」ではなく「数字を運ぶ作業」でした。判断につながらない定点観測は、人間がやる必要がありません。
仕組み:取得 → 比較 → 異常時だけ、仮説つきで報告
弊社の見張り番AIの流れは4ステップです。
- 取得——毎朝、AIがGA4とSearch ConsoleのAPIから前日の主要指標を自動取得する(セッション数、流入元別の内訳、主要ページのアクセス、検索での表示・クリック)
- 比較——直近の同じ曜日の平均と比べ、増減の割合を計算する
- 判定——しきい値を超える急増・急減があるかを判定する。なければ何も通知しない
- 報告——異常があった時だけ、「どの指標が」「普段と比べてどれくらい」「どのページ・流入元が要因と考えられるか」の仮説を添えてSlackに投稿する
このうち人間の仕事として残っているのは、通知が来た日にその仮説を確かめて手を打つことだけです。転記はゼロ、ダッシュボードを開く習慣もゼロになりました。
設計の核心:「異常があった時だけ」にこだわる
この仕組みで最も重要な設計判断は、毎日レポートを送らないことです。
実は最初期には毎朝サマリを送る案もありました。しかし毎日届く通知は、確実に読まれなくなります。「いつもの通知ね」と流すことが習慣化した瞬間、その中に本物の異常が混ざっていても目に入りません。通知の価値は頻度に反比例します。
だから見張り番AIは沈黙をデフォルトにしています。通知が来た=今日は見るべき日。このシンプルな信号にすることで、数値への感度はむしろ上がりました。
異常検知のしきい値設計
「異常」をどう定義するかは、凝りだすとキリがありません。弊社の結論は、シンプルなルールで始めて運用で直すです。
- 比較対象は「直近の同じ曜日の平均」——Webのアクセスには曜日周期があるため、単純な前日比だと毎週月曜に偽の異常が出ます。同じ曜日同士で比べるだけで、誤検知は大きく減ります
- しきい値は「一定割合以上の増減」から始める——最初から統計的な異常検知モデルを組む必要はありません。「平均から◯割ずれたら知らせる」で十分に機能します
- 最初は敏感に、徐々に鈍く——初期は通知が多めに出る設定にして、「これは知らせなくていい」というケースをAIへの指示に追記して除外していきます。逆(鈍い設定から始める)だと、見逃しに気づけません
- 絶対数が小さい指標は割合で見ない——1日10アクセスのページが20になると「2倍の急増」ですが、意味はありません。最低件数のフロアを設けます
30分で作れる最小構成
フル構成をいきなり作る必要はありません。弊社の経験から逆算した最小構成は次のとおりです。
- 指標を1つ選ぶ——まずは「サイト全体のセッション数」だけでよい。欲張って全指標を見ると、しきい値調整が終わらなくなります
- ルールを1行書く——例:「前日のセッション数が、直近4回の同じ曜日の平均から3割以上ずれたら、Slackの#マーケに理由の仮説つきで知らせる」
- AIエージェントに毎朝の実行を任せる——GA4からのデータ取得と比較は、AIエージェント(弊社はClaude)に上のルールを渡せば実装まで含めて任せられます。まずは毎朝手動で走らせて精度を確かめ、安定したら自動実行に切り替えます
ここまでで30分。効果を体感したら、流入元別・ページ別の内訳、Search Consoleの検索指標へと広げていきます。
週次サマリは、人が読む前提で別に作る
異常検知とは別に、弊社では週次サマリをスプレッドシートに自動で蓄積しています。日々の見張りは「異常だけ」でよい一方、週に一度は全体の傾向を眺める時間も必要だからです。ここで大事なのは役割の分離で、毎日の通知は「動くため」、週次のサマリは「考えるため」。この2つを1つの通知に混ぜると、どちらの役割も果たせなくなります。
なお、この見張り番は弊社の夜間自動化基盤の一部として動いています。タスクの無人実行やガードレールの全体設計は『深夜2時に働くAI社員——「無人で踏み込まない」ガードレールの全設計』で公開しています。
まとめ:人間は「見張る」のではなく「駆けつける」
数字の監視は、真面目な人ほど毎日やってしまいますが、毎日見ることと異変に気づけることは別物です。見張りはAIに任せ、人間は通知が来た日に駆けつけて判断する——この分業に変えてから、数字を見る時間は減ったのに、数字への反応は速くなりました。
弊社のAI顧問では、この見張り番AIのように「自社で毎朝実際に動いている仕組み」をもとに、お客様の業務データに合わせた設計と内製化を支援しています。
